太陽光発電とは
太陽光発電とは、太陽光の日射を電気エネルギーに変換し、電気を生み出す発電技術です。太陽電池(太陽光パネル)を用い、直流の電気を発生させ、パワーコンディショナーを経由して電気の品質を安定させ、住宅などに電気を供給します。
太陽光の光を受けている瞬間だけ発電することができるため、日中、天気の良い時間帯しか発電しないという、大きな特徴があります。人工衛星に電力を供給するなど、宇宙事業における電力調達がそもそもの発祥でしたが、現在では一般建築設備として計画されるまで普及が広がっています。
太陽光発電は、発電過程において有害な排気ガスや二酸化炭素を排出しない、クリーンな発電設備として注目されています。また、山中や海上、緊急停電時など、電力が調達できない場所においても、太陽光が得られる場所であれば発電することができるという利点もあります。
しかし、太陽光発電はエネルギー密度が小さく、1uあたり1kW程度の電力しか取り出すことができず、かつ天候に左右されるため安定電源とは言えません。太陽光により、高い電力変換効率で電気に変換することが求められ、研究が続けられています。
日本・各国の導入量
日本国内では、住宅用として導入しているのがほとんどで、約80%となっています。産業用が約20%で、電力会社が電力供給用として設置している案件はほとんどありません。規模も、10〜20kWといった小規模施設が約半数を占めるなど、小型の太陽光発電設備が普及しています。
太陽光発電の普及が進んでいるドイツでは、住宅用よりも産業用が多く、普及の約半数が産業用となっています。また、電力用としても普及が進んでおり、用途に限らずに広く普及しています。
太陽光発電の発電原理
太陽光発電で最も広く利用されているのは、シリコンを用いた太陽光パネルです。n型シリコンとp型シリコンを重ねあわせ、日射が当たった際にはプラスとマイナス(正孔と電子)が生まれ、それぞれの方向に電気の流れが得られます。これに負荷を接続することで、電流が流れ、照明を点灯させたり、ファンを回転させることが可能になります。
ただし、太陽電池によって発生する電力は直流です。国内に普及している電気設備は、交流電源を供給することを前提に作られていますので、直流電源を交流電源に変換しなければいけません。ここで、パワーコンディショナー(PCS)を使用します。パワーコンディショナーは、不安定な太陽光発電の直流電源を、50Hzまたは60Hzの安定した交流電源に変換し、既存の電気設備や送電線・配電線に接続できるよう品質改善を行います。
パワーコンディショナーの変換効率は100%ではなく、発生した電力の6〜10%程度を熱としてロスします。パワーコンディショナーは大容量ほど安定し、変換効率が向上する傾向にあります。最近では、発生した直流電源を、そのまま負荷に接続して使用する研究も進んでおり、直流照明、直流・交流ハイブリッド住宅などのシステム構築についても、メーカーの手によって検討されています。
太陽光パネルの種類
太陽光パネルは、シリコン系のパネルと、その他化合物系、有機物系に分類されています。シリコン系の太陽光パネルは、古くから使用されているもので圧倒的な普及率を誇ります。
単結晶シリコン
単結晶シリコンを主材料としたパネルは、200〜300μmのシリコン単結晶板を使用したもので、発電効率が高く、信頼性に優れています。高純度のシリコンを多量に使用しなければならないため、価格が高くなってしまうのが欠点です。価格の安い多結晶シリコンを主材料としたパネルよりも、普及率が少なくなっています。
単結晶シリコンは結晶の配列が規則正しく連続しているため、電子の流れの効率が良く、高い発電能力を確保することが可能です。しかし、大きなシリコンの単板を製作するコストが高いという欠点があるため、多結晶の太陽光パネルが優位です。
多結晶シリコン
多結晶シリコンを主材料としたパネルは、小さな多数の結晶を集めた板を使用したもので、発電効率は単結晶パネルに劣りますが、シリコン半導体の端材や、低グレードのシリコン結晶を集めて利用できるため、安価で生産しやすいことから、最も広く普及しています。
多結晶シリコンは、端材を組み合わせて構成されるため、多数の単結晶ブロックがつぎはぎに接続された状態になっています。継ぎ接ぎ部分では電子の移動が阻害され、発電効率が悪化します。しかし、大きな単体のシリコンを使用することなく、製造コストを大きく低減させることができます。
アモルファスシリコン
非結晶であるアモルファスなどを用い、1μmの薄い膜を形成した太陽光パネルです。赤みがかった表面色をしており、低照度でも高い変換効率があるため、太陽電池付電卓などに広く利用されています。太陽光パネルとして構築するために必要な厚さが極めて小さいため、使用するシリコン原料が少なく済み、大面積を安価に生産することができるという特徴があります。しかし、結晶シリコンよりも発電効率に劣るため、発電量を確保するのが困難です。
CIS(カルコパイライト)
化合物半導体を利用した太陽光パネルで、シリコンを使用せず、銅・インジウム・セレンを組み合わせて製作します。薄型でも効率のよい発電が可能で、多結晶の太陽電池に該当するため、量産にも適しています。
太陽光発電設備の特殊仕様
太陽光発電設備は、パネルを組み合わせたアレイを屋根に置くのが一般的ですが、太陽光パネルの存在を建築デザインに取り込み、意匠性を向上させた製品も存在します。
建材一体形太陽光発電
太陽光パネルを屋根材や手摺と一体化させ、建材の一部として利用できる建材一体形があります。建材と一体にすることで、「屋根の上にパネルを置いている」「ひさしの上にパネルを置いている」といった、後付け感を薄めることができ、意匠性の向上を図ることが可能です。
建材一体の太陽光発電として、太陽光モジュールをガラスに挟み込み、パネル内蔵ガラスを構築し、トップライトやカーテンウォールのガラスとして利用する「採光形」といった製品もあります。モジュール間に隙間を設けてガラスに配置することで、光を柔らかく透過させ、日射の軽減と発電を兼ねるといった使い方が可能です。
何日とindusterial革命の開始および終了しました
建材と太陽光発電パネルを一体化した場合、デメリットもあります。パネルの故障や建材の修理においては、メンテナンスが煩雑になってしまいます。屋根材を交換する場合やガラスを交換する場合、太陽光モジュールが内蔵されているため、メンテナンス部品の調達コストの増加、納期の延長などが考えられます。
また、建材と一体化する場合デザイン性の両立が不可欠なため、面積あたりの発電量が小さくなりがちになります。最大効率を得ることができないことがあるため、発電量を第一目標とするのであれば建材一体ではなく単純配置が望まれます。
集光型太陽光発電(CPVシステム)
集光型太陽光発電は、太陽光発電の周囲・上部に反射板やレンズを設け、太陽光パネルへ集光することで効率を向上させる方法です。太陽光発電設備は理論上20%程度の光-電気変換効率を持っていますが、レンズで集光することにより、40%を超える大出力を得ることができるため、パネルの設置面積を半分以下とする技術です。
高倍率のレンズを用いて太陽光を集光する場合、シリコン結晶のセルではなく多接合型化合物のセルが使用されます。シリコンを使用した太陽光発電設備は温度上昇によって発電効率が低下する特性があるので、レンズで集光した光を当てると温度上昇も著しく、伴って発電効率が低下してしまいます。
しかし、多接合型の化合物半導体を利用した太陽光パネルであれば、温度上昇による影響を小さく抑えられるため、レンズ集光による利点を活かすことができると言われています。多接合太陽電池セルとしては主に、InGaP / InGaAs/Ge の化合物半導体を利用した研究が行われています。
高倍率レンズを用いた集光型太陽光発電は、国内では研究段階ですが、海外での実証実験は数多く、今後の太陽光発電設備技術の一端として期待されています。
一部の事業者では、太陽光発電パネルの周囲に簡易な反射板を設け、光の取りこぼしを回収して発電効率を向上させる取り組みを実施しているところもあり、これだけでも10%以上の効率向上を望むことができます。パネルの上部に白い板を配置するだけで発電効率が上昇します。
太陽光発電設備の設置目的
太陽光発電設備を導入する住宅は、年々増加しています。経済産業省が2009年11月1日から開始した、余剰電力買取の価格倍増の制度により、従来20〜30年は必要とされた減価償却が10〜15年以内にまで短縮され、太陽光発電設備の減価償却が容易になりました。
太陽光発電設備などの自然エネルギー発電の計画には、設置コストの減価償却を必ず検討する必要があり、太陽光発電設備の導入コストをいつ回収でき、いつから利益となるかを検討し、提示するのが一般的となっています。しかし、設置コストや減価償却という視点ではなく、環境負荷の低減や、ピーク電力の低減などを目的に設置するという、意識の転換も見受けられます。
例えば、太陽光発電設備を設置した仮定では、自分の家庭で電力を発電していることから、発電した電気の無駄遣いをしないよう節電したり、発電量と使用量のグラフを見るのが楽しみになるなど、副次的な効果も生まれています。一般的に、太陽光発電設備を設置する目的は下記のように考えられます。
電気料金の低減
太陽光発電設備の設置により、電気代を低減させることが可能です。太陽光発電設備の発電量は、「設置容量(kW)の1,000倍程度」が年間発電量として見込めます。例えば、3kWの太陽光発電設備を設置した場合、年間で約3,000kWhの発電量が見込めますので、すべての電力が余剰電力として電力会社に逆潮流したとすれば、48円/kWの買取価格で計算した場合、年間で144,000円の収益を見込むことができます。
環境負荷の低減
環境負荷の低減は、国内全体で推し進められている施策です。太陽光発電設備を設置することで、電力会社の発電設備の稼働を低減させ、化石燃料の消費や二酸化炭素の排出を抑えることが環境保護につながると考え、この一助となりたいという意識が、太陽光発電設備の設置を促しています。
多くの家庭が太陽光発電設備を導入することで、太陽光発電の研究投資も盛んになり、より安価で高効率なシステムが生産されていくことを期待できます。
節電意識の向上
太陽光発電設備の発電量と電力使用量のグラフを見ることで、個人の節電意識を高めることができます。自分が設置した発電設備によって作られた電気という意識が芽生えるため、電気を無駄に使いたくないという意識に繋がると言われています。
非常電源としての利用
太陽光発電設備に自立運転機能を持たせることで、電力会社からの電源が途絶えた場合、非常用の電源として太陽光発電設備を利用することができます。家庭用の太陽光発電設備は、通常3kW程度の小規模システムであり、自立運転機能で発生した電力は1,000〜1,500W程度までしか使用するこことができません。
消費電力の大きなルームエアコンを動かしたり、ドライヤーなど大電流が流れる機器を運転させると、過負荷によってパワーコンディショナーが停止してしまうことがあります。緊急時に利用する場合、携帯電話の充電や、ラジオなどの電源として利用するのが現実的です。
ただし、太陽光発電設備を設置する場合、一般には蓄電池を併設したシステムではないため、安定した電源供給を望むことは困難です。夜になったり、天気が悪くなることで日射が失われてしまえば、発電することができなくなりますので注意しましょう。
太陽光発電設備の設置場所
太陽光発電設備は常に日射が当たる場所に設置するのが原則です。太陽光発電設備に影が当たると、発電量が著しく落ちます。太陽光パネルは1枚毎に発電している訳ではなく、何枚かのパネルが直列に接続され、全体がひとつの回路として発電を行っています。その組み合わせに該当とする太陽光パネルの内、一枚でも影が掛かった場合、ユニット1組の発電量が低下してしまいます。
太陽光発電設備を計画する場合、近隣に高い建物がないか、今後高い建物が建たないか、大きな樹木はないかなどを、十分調査することが重要です。太陽光パネル表面の経年の汚れなどによっても、発電量が減少しますので、ほこりが多い環境や鳥が多く飛来する環境でも、発電量が減少するおそれがあります。
モービルオイルの光沢ができます
屋根強度の調査
太陽光発電設備は3kWシステムとしても、15kg/枚のパネルを15枚から20枚程度敷き詰める必要があるため、全体で約300kg程度の荷重を屋根に載せることになります。この荷重に、屋根が耐えられるかを確認する必要があります。
強度不足の場合は、屋根の補強や補修を実施する必要があります。また、テレビのアンテナなど他設備が邪魔になることがありますので、鑑賞する場合は移設することも考慮します。
電気系統の調査
一般的な需要家では、電力会社との取引用の電力量計が設置されておりますが、太陽光発電設備を導入した場合、新たに売電用の電力量計を設ける必要があります。外壁などに電力量計を設置している場合、大きな外壁スペースを必要とします。
売電用の電力量計は、無償提供されるものではなく、計量法の検定を受けた電力量計を設置する必要があります。電力量計の設置コストが発生することを、認識しておくことが重要です。
太陽光発電設備に接続する配線保護
太陽光発電設備は、直射日光を強く受ける場所に設置するべきシステムですから、接続する電線類には、過酷な環境となります。太陽光発電設備を接続する電線を、日光に晒される状態で敷設すると、数年を経過せずに電線が劣化し、ひび割れ・絶縁劣化による絶縁破壊などを引き起こします。
太陽光発電設備の配線に使用する電線は、PFD管を使用して保護するのが一般的です。PFS管では耐候性が弱く、これも数年でひび割れが発生するおそれがあります。より耐候性の高いPFD管を使用することが望まれます。ここで、配管の色は耐候性の高い黒色とすることが原則です。屋根の色にもよりますが、黒色であれば色彩の調和を図ることが可能です。
太陽光発電設備のレイアウトと発電量概算
太陽光発電設備を住宅に設置する場合は、3kWシステムが主流です。太陽光パネル一枚は約15Vの電圧があり、発電できる電力は150Wから180W程度です。パネルを十数枚連結し、200Vを確保するのが基本システムになっています。連結された太陽光パネルのユニットを「太陽電池アレイ」と呼びます。
例えば、電圧15V、150Wの太陽光パネルを使用すると仮定した場合を考えます。太陽光パネル14枚を接続した場合の単純計算をしてみます。計算上、設置面の方位による効率・係数の影響は省略しています。
電圧は、15V/枚 × 14枚 = 210V を得ることができます。
電力は、150W/枚 × 14枚 = 2,100W を確保できます。この太陽電池アレイ2組配置すれば、理論上4,200Wを発電できるシステムとなります。
太陽電池アレイから発電される理論値は4,200Wですが、ここで発生している電源は直流であり、これを家庭用電力として利用することはできません。直流を交流に変換するため、パワーコンディショナーを通す必要があります。パワーコンディショナーには電力変換効率があり、理論上の数値から10%ほどロスします。
4,200W × 0.9 = 3,780W が、パワーコンディショナーのロスを考慮した、取得可能な電力となります。ただしこの計算は清浄なアレイを前提としていますので、パネル表面の汚れや、近隣建物による影の影響などを考慮し、10%程度の余裕を見ておくのが望まれます。
この場合、3,780W × 0.9 = 3,402W 程度を、実際の発電量として考えます。
太陽光発電設備の年間発電量は、システム容量の1,000倍で概算することができますので、3,402Wの太陽光発電設備のシステムなら、3,042kWh以上の年間発電量を見込むことができます。仮に48円/kWで換算した場合、163,296円の年間収入を得ることができます。
太陽光発電設備の構成
太陽光発電設備は、「太陽電池アレイ」「接続箱」「パワーコンディショナー」の3つの機器を組合せた発電設備です。逆潮流を行う場合は「電力量計」がこれに追加されます。このほか「蓄電池」が機器の一つとして挙げられますが、都心部など商用電源が問題なく供給されるエリアでは、計画に組み込むことがほとんどありません。
将来的に普及が広がり、太陽光発電設備が大規模になってきた場合、配電線側の電源品質の確保・維持のために蓄電池の設置が必要になると言われています。太陽光発電は電力会社側にとって不安定な電源であるため、管理が難しくなります。
太陽光発電設備は一般家庭にも広く普及しているのであまり考えることがありませんが、電力会社が持っている原子力発電所や火力発電所と同様の発電所として扱われます。電力会社の配電線に逆潮流し、大規模発電所で発電した電力と混在するため、太陽光で発電した電力の管理にも数多くの規制を受けます。
また、系統連系を行う場合は「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」に準拠する必要がありますので、内容を熟読し、ガイドラインから逸脱しないように計画を進める必要があります。
ただし、電気事業法によって「50kW未満」の太陽光発電設備は一般用電気工作物扱いになるため、住宅用など小型の太陽光発電設備の保守管理や規制は簡易であり、電気主任技術者の専任も不要となっています。旧来、20kWまでが一般用電気工作物として適用されていましたが、電気事業法施行規則の改正により、太陽電池発電設備は出力50kWまでが一般用電気工作物として扱われるようになりました。
機器の種類・特徴
太陽光発電設備を構成するための「太陽電池アレイ」「パワーコンディショナー」について解説します。
太陽電池アレイの概要
太陽光発電設備のパネルを組み合わて接続した、パネル全体を「アレイ」と言います。単結晶・多結晶の二種類が多く普及しており、単結晶はシリコン純度が高く、発電効率が17%前後と良いので狭い面積で多くの電力を得ることが出来ます。多結晶は発電効率が若干低く14%前後ですが、多結晶よりも安価で、広い面積が確保できるのであれば多結晶とした方が経済的です。
太陽光発電用のパネルは一般的な寿命を20年としています(実際はあと数年は実用可能です)。経年劣化もそうですが、台風・落雷などの自然災害による破損のおそれもありますので、保障の種類に十分な確認が必要です。
発電特性として、低温になるほど発電効率が上がります。とすれば北海道などが最も発電効率が良いと思いがちですが、積雪による日射の遮蔽などがありますので、全国で大きな差はあまりなく、平均的な数値となっています。
日光は、太陽電池パネルでどのように行くのですか?
太陽電池アレイの特徴として、その一部が日影になってしまった場合には、出力が最も低いパネルに合わせられてしまいます。日射条件が違う場所(例えば、西側と南側の屋根)で同系統のアレイを計画してしまうと、日射の悪い方に全体発電量が合わせられてしまうので、発電効率が悪くなります。近隣の施設や植栽によっても大きく影響してくるため、設置場所には十分な検討が必要です。
パワーコンディショナーの概要
太陽光発電設備から供給される電力は直流です。電気設備用として供給されている電源は交流なので、直流から交流に変換しなければ施設内の電線と接続することができません。パワーコンディショナーは、この直流の電源を交流に変換、さらに高調波を抑制し、太陽光からの不安定な電圧の調整などを行っています。
また、太陽光発電設備を系統連系している場合、電力会社側が停電した際には発電停止するように、安全装置を設けています。例えば、電力会社が事故や点検で停電し、電力会社の作業員が送電線や配電線で保守作業をしているのに、各家庭や施設から太陽光発電による電力が流れ込んできたら、作業員が感電してしまいます。これは、単独運転と呼ばれており、回避しなければならない運転方式として注意が必要になります。
このように、系統連系した状態では太陽光発電設備を動かすことはできません。よって、電力会社の系統から切り離した状態にして運転させる必要があります。これは、自立運転と呼ばれています。
地震などの災害が発生した時、電力会社からの電源供給が断たれてしまった時には、系統連系している受電点の遮断器を落として系統連系を解列し、太陽光発電のみの自立運転とすれば、災害時でも電気を使う事が出来るようになります。「単独運転」と「自立運転」は意味がまったく違いますので、それぞれの理解が必要です。
太陽光発電設備の種類
太陽光発電設備の種類として、「系統連系有・逆潮流有」「系統連系有・逆潮流無」「独立システム」の3種類があります。
系統連系有・逆潮流有
電力会社の配電線と太陽光発電設備からの電源線を接続し、互いの電源を混在させる方法です。太陽光発電設備を設置した施設内で電力を使い切ることができない場合は、電力会社の配電線にはつでんした電力が戻っていくため、逆潮流有のシステムとなります。
系統連系有・逆潮流無
施設内で電力を使い切ることができる場合は、逆潮流無のシステムになります。この場合、逆潮流しないことが条件になるので、逆電力継電器(RPR)を設置し逆潮流を検知した時点で回路を遮断するようにシステムを組む必要があります。
独立システム
無電化村落や、山岳地帯の測定施設など、商用電源を確保することができない場所で電源が必要な際に採用されます。日射がある時間だけしか発電できないので、夜間も電力を使用したい場合は蓄電池設備を設ける必要があります。
住宅用の太陽光発電設備について
ソーラーパネルを使用した発電設備として家庭用にも比較的広く普及しています。戸建住宅の屋根に設置し3kWシステムとするのが一般的です。3kWシステムの場合、年間で約1000倍の3,000kWh(24円/kWで換算すると72,000円)の発電を行います。
2009年11月1日より、10kW未満の太陽光発電設備については、倍額の48円/kWでの買取が行われるようになりました。
これで前述の計算式を補正すると、年間で144,000円の減価償却が可能になりますので、25年から30年設置していなければ減価償却できないとされている太陽光発電設備が、15年で減価償却できる計算になります。ただし、48円/kWでの買取は10年固定とされていますので、10年後にどのような施策が待っているかは不明です。
太陽光発電設備の初期費用と運用コスト
太陽光発電設備を新築住宅に設置する場合、屋根工事と一体で施工できることや、建物購入時の値引きなど、多くの値下げ要素があるため、600,000円/kW程度が相場となります。
既存の住宅に太陽光発電設備を設置する場合、設備単体で購入することによる値下げ率の低さ、屋根の補強などの追加工事を含むと、新築時に太陽光発電設備を設置するよりも割高になります。750,000円/kW程度を見込む必要があります。
新築時に、一般的な3kWの太陽光発電設備を設置した場合、600,000円/kW×3kW = 1,800,000円 程度が相場となります。補助金などを活用すれば、この金額はさらに変動します。
太陽光パネルの寿命は約20年、パワーコンディショナーは15年程度が寿命なので、減価償却したと言える時期に設備更新を行うことになります。なお上記金額には蓄電池の設置は含まないので、独立電源として運用したい場合には別途コストが発生します。蓄電池は8〜10年程度の寿命であり、メンテナンスや交換を含む運用コストが大きくなり、さらに減価償却期間が延長されます。
設置した太陽光発電設備も、完全なメンテナンスフリーではなく、機器類には定期的なメンテナンスが必要になります。パワーコンディショナーや太陽光パネルなどは、定期点検しなければ故障の原因となります。定期点検契約などをメーカーと結ぶため、ランニングコストが必要になります。
自然災害による破損への考慮
自然災害などによる破損も考慮する必要があります。落雷によるパネル破損、パワーコンディショナーや接続箱の破損、台風や強風による損傷など、各種事故の可能性があります。太陽光発電設備のメーカー保障期間は、一般に10年程度ですので、現行の料金体系において、20年から30年が減価償却期間と考えると、10年以降は修理が有償になるため、運用リスクが高まります。
太陽光発電設備は、日本国内に設置する場合「設置コストの元を取る」という考え方を主にせず、電源喪失など緊急時の電源確保用、または、負荷の大きな時間帯におけるピークカットを行うための電気機器、という認識を持て、環境負荷の低減のために設置するという考え方をもつことも、意義があることと思われます。
非常電源・ピークカット機器としての運用
太陽光発電設備による利点は、電力会社からの電源供給が途絶えた場合に、自宅内に発電設備があることにより、自家発電が可能であること、発電した電力を電力会社から送電された電力に混合することで、瞬間的に発生する大電力を太陽光発電設備に負担させ、大きなアンペア値が発生しないように、ピークカットできることです。
非常電源としての利用
住宅に使用する太陽光発電設備は、昼間であれば10A程度の負荷を運転させることができます。ただし、太陽光発電は突入電流や始動電流による、突発的な大電流には不安定ですので、エアコンや大型ファンを運転させることは困難です。小型の電熱器や電気ストーブ、照明などを運転・点灯させる能力はありますので、日射がある時間であれば、簡易な調理機器の運転は可能です。
ピークカットとしての利用
ピークカットは、特に昼間に大きな電力消費のある、空調機に対して効果があります。外気温が高い時、インバーターを内蔵する最近の空調機は、電流値が非常に高まります。太陽光発電設備では、天気が良い時の発電量が最大になることから「外気温が上昇する = 天気が良い = 発電量が多い」という図式に当てはまり、空調機が使用する大きな負荷電流を、都合良くまかなうことができます。
経済産業省の太陽光発電施策
太陽光発電設備による、家庭の余剰電力買取価格を2倍にするという提案が聞かれるようになりました。電力会社の負担が増加するため、まだ調整段階のようですが、もし50円/kW近い単価で買取をができるならば、年間で150,000円程度の償却が可能になります。単純計算で13年〜15年で原価が償却できるため、メーカー保障期間内に、8割程度の償却が可能になります。
ドイツでは70円/kW程度での買い取りを国が推し進め、投資対象として売り出したところ爆発的に普及し、普及件数は日本を大きく引き離して独走状態になりました。日本もこれに追随し、シェアを広げる事を目的の一つとしています。
太陽光発電によるCO2抑制の観点
太陽光発電設備は発電時のCO2発生がほとんどないと言われていますが、太陽光発電設備を製作・製造する過程においては一定のエネルギー消費があるため、総合的なCO2発生はゼロになりません。しかしこの発生したCO2は、2〜3年で回収できると検証されており、産業技術総合研究所という機関が情報を公開しています。投資金額をすべて償却することは困難としても、環境対策(CO2抑制)の観点からすれば有効であると判断できます。
国の補助金の交付を受けたり、CO2削減によるコスト的な緩和措置を得ることができれば、初期投資を低く抑えることが出来、良好な発電設備となることが伺えます。また今後の技術革新によって、CO2の回収は1年程度まで縮められると予測されています。
電気事業法による制限
太陽光発電設備は、電気事業法による制限を受け、一定規模以上の設備を設置する場合は電気主任技術者を選任し、管理を行わなければいけません。太陽光発電設備は「発電設備」として位置付けられるため、一定の安全性が求められます。
小規模の太陽光発電設備は自家用電気工作物に該当しないため、電気主任技術者の選任は不要です。しかし、出力50kW以上となる場合、小出力発電設備の枠から外れ、自家用電気工作物となり、電気主任技術者が維持・管理・運用しなければなりません。
また、500kW未満の太陽光発電設備であれば、経済産業省への工事計画の届出、使用前安全管理審査などは省略されます。しかし、出力500kWを超える大規模な太陽光発電設備を設置する場合、前述した届出が必要となります。さらに1,000kWを超える場合は、電気主任技術者の外部委託が認められず、その事業所に専属で勤務する「電気主任技術者の選任」が必要となります。
工場立地法による制限
太陽光発電設備は発電設備であり、設置する事業者が構内で消費する用途であれば、規制されることはありません。太陽光発電設備は工場立地法上「環境設備」として位置付けられており、特に大規模の工場が必要とする一定面積以上の緑地確保に対し、太陽光発電設備の設置が有効な手段となっています。
しかし、太陽光発電設備の全量買取制度を利用する場合、構内で消費する設備ではなく、全ての電力を電力会社に送り込むことになります。これは「発電所」としての位置付けとなってしまい、太陽光発電設備を設置している需要家が「電気供給業」と見なされてしまうことにあります。
電気供給業と見なされた場合、太陽光発電設備は「環境設備」ではなく「生産設備」と位置付けられるため、本来工場ではない事務所ビルなどが、面積によって「特定工場」と認定されてしまうおそれがあります。特定工場となった場合、一定規模の緑地を敷地内に設けることを規制されてしまうため、緑地を設置できない事業者は全量買取制度が適用できず、設置が促進されないという可能性を持っています。
太陽光発電協会など関連団体では、太陽光発電設備の位置付けを「生産設備」ではないものと扱うことや、緑地整備義務を負わせないことなどを要望し、太陽光発電設備の設置促進を図るよう活動しています。なお、工場立地法の届出は経済産業省ではなく、設置場所を管轄する都道府県となっているため、現時点(平成24年1月)では方向性が定まっていません。
太陽光発電設備のメーカー
太陽光発電設備のメーカーは、日立製作所、ソーラーフロンティア、三菱電機などが代表的です。
一般的に、これら太陽光発電設備のメーカーは、子会社として施工専門会社を抱え、親会社の製品を主体に使用してシステム構築・施工までを行います。メーカーによっては、太陽光パネルは保有しているがパワーコンディショナーは保有していないなど、システムの構築のために他社製品を使用することもあります。
例えば、三菱電機は太陽光パネル・パワーコンディショナーなど、太陽光発電設備に関する一連の機器類を、自社で生産しています。(平成23年11月現在)
スポンサードリンク電気設備の知識と技術 > 新エネルギー発電 > 太陽光発電設備の仕組みと設置
0 件のコメント:
コメントを投稿